kaerusan backyard
浅草十二階計画
かえる目
Jul 30, 2009
10:38am
えっとこのまえさー
会話のことばには、相手に特定の構えをおこさせる前置きがたくさん組み込まれている。
たとえば、何かを言い出そうとして「えっと」という。これは、単なる口ごもりとは限らない。会話のやりとりをよくよく分析してみると、相手のことばじりとこちらの言い出しがかぶっているときにしばしば「えっと」ということばが観察される。つまり、えっと、は、相手のことばの終わりかけたところをねらって、ここから自分の話す番が始まるよ、と予告する役割も持っている。相手は、ことばを終えながら、あ、次はこいつが話すのかと身構える。こうして、新しい話題をはなし、きくための、お互いの身構えが整う。
もし相手が身構えていなければ、さらに前置きを続ければよい。
えっと、このまえさー、なんていうのかな、とにかく。
文章では、逆のことをする。文章を読む人は、読み始めた段階で、すでにそのページやモニタに注目し、「文章を読む」という身構えをとっている。そこにさらに前置きをおく必要はない。たとえば
えっと、今日さー、歯医者に行ったんだけどー、
という語りだしは、文章にするとき、
歯医者に行った。
とする。相手の身構えにすっと入る。
もっともこの手の刈り込みをやりすぎると、鼻もちならない感じがしたりもする。たかが歯医者体験じゃないか。小説でも始めようというのか。そんな違和感を感じる場合は、少し前置きを足してみる。
えっとこのまえさー、歯医者に行った。
あ、いいね。
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